私、あなたを呪ってマス! ~こちびOLと凶悪な先輩、芹沢彰人の日常~
 しばらくして、離れた菅野は言った。

「……なるほど」

 なるほど?

「お前との方がドキドキするかも」
と勝手に腰に手を回し、間近に小春の目を見つめて言ってくる菅野に、

「……会社だからじゃないですか? それ」
と言いながら、小春は口許を拭う。

 そして、気づいた。

 彰人のときはこんなことしなかったと。

 思えば、最初からこういう嫌さはなかった。

 いきなり、勝手に、なにしやがるっ、と思っただけだ。

 ……もしかして、私、最初から、彰人さんを好きだったとか?

 いや、ないないない。

 絶対ない。

 こんなときに助けに来てもくれない王様なんて、絶対、好きじゃない〜。

 立ち上がった菅野は、腰が抜けたように座り込んでいる小春に手を差し伸べてくる。

 いつもなら、頼もしく感じて、すぐにつかんでいた菅野の手に今は触れられない。
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