私、あなたを呪ってマス! ~こちびOLと凶悪な先輩、芹沢彰人の日常~
 でも、彰人に敵うわけもないし。

 なにより、嫌がる素振りを見せながらも、結局、小春は彰人に逆らわないでいたから。

 ああ、またか、と思って諦めたのだ。

 それにしても、彰人以外に、小春ちゃんにキスした奴が居るって誰だ。

 そっちなら、血祭りに上げても、彰人も小春も文句を言わない気がする、と思いながら、
「あの……小春ちゃん、落ち着いて。
 ね?」
とそっとその背に安心させるように触れてみる。

 小春は逃げなかった。

 最近は、小春のことは、こちびと彰人に合わせて言っていた。

 彰人のものだと自分に自覚させるためにも。

 でも、今はちょっと、小春と呼んでみる。

「あの、花音ちゃんがどうかしたの?」

「彰人さん、週末は、花音さんに会いに行くって言うんですーっ」

「ああそう、この間帰ったはずなのに、珍しいね」
と動揺したまま言う。

「帰るって?」
と小春が顔を上げた。

 ……見つめないでっ。

 お願い。
 近くで見つめないでっ、と願う。
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