私、あなたを呪ってマス! ~こちびOLと凶悪な先輩、芹沢彰人の日常~
「王様がそうお命じになるのなら、私は、井川さんと付き合います」

 こういうのを売り言葉に買い言葉って言うんだろうな、と思いながら。

 ほう、と言った王様は、
「わかった。
 じゃあ、そうしろ」
と言い、ステープラーを半端な位置に持ち上げたまま、行ってしまう。

 今、なんつった!?
 ちょっと貸せっ、そのステープラーッ!

 ……と心の中だけで叫んだ。

「あ、あのさあ」
と後ろから、遠慮がちに井川が話しかけてくる。

「早く謝った方がいいよ」

「ああっ。
 井川さん、すみませんっ。

 なんか巻き込んじゃって!」
と慌てて振り返り謝ると、

「なんか今僕、存在丸ごと忘れられてなかった……?」
と井川は苦笑する。

 確かに……。

 そういえば、そもそも、井川の発言により喧嘩したんだったのだが。

 最早、世界に自分とあのムカつく王様以外、居なくなっていた。
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