私、あなたを呪ってマス! ~こちびOLと凶悪な先輩、芹沢彰人の日常~
結婚してくださいっ!
週末、実家の庭に取り付けたハンモックで彰人は揺られていた。
かけてきやがらねえな、こちびめ、とまた確認してしまった携帯をハンモックに放る。
猫のくせに、俺の親友と抱き合ってるとか、俺に次ぐ人気の菅野にキスされるとか。
調子こいてんじゃねーぞ、と思いながら、本を読もうとしたが、頭に入って来ず、それを顔の上に伏せる。
塀の向こうで、妹の花音が隣家の息子と揉める騒がしい声が耳に入ってきていたが、今、人の恋路にまで首を突っ込む余裕はなかった。
ふいに、猫の方のこちびを思い出す。
拾ったとき、ちっちゃくて細い猫だったので、生まれたばかりだろうと、ミルクをやっていたら、こちびはずっと鳴き叫んでいた。
どうもおかしいと思って、普通の餌を与えたら、大喜びで、キャワンキャワンと鳴きながら食べていた。
……お前は犬か。
っていうか、赤ちゃんかと思ってたら違ったのか。
危うく栄養失調で殺すところだった。
だが、一ヶ月もしないうちにこちびは消えた。