私、あなたを呪ってマス! ~こちびOLと凶悪な先輩、芹沢彰人の日常~
 何故、猫。

 そして、何故、失踪した猫、と思ったのだが、彰人は、おい、こちび、といきなり勝手な名前をつけて呼び始める。

『やだーっ。
 芹沢くんが、こちび、だって、かわいーっ』
とお姉様方まで言い出して、なんだかそれが定着してしまった。

『私、全然、ちびじゃないんですけど……』
と言ってみたのだが、

『サイズじゃなくて、雰囲気が、こちびなんだ』
と彰人は、わからないことを言う。

 よく聞いてみれば、拾ってすぐに失踪した、一瞬だけ飼っていた猫の名前らしい。

 何故、私をその印象の薄い猫に例えますか、と小春は思っていた。

 そのあと、ゲームで負けた彰人に罰ゲームが待っていた。

『じゃあ、彰人。
 適当な番号言って、当たった奴とキスすること。

 相手が男でも、女でも』
といつも幹事役になる彰人の同期が言い、やだーっ、と女の子たちは盛り上がっていた。

 いや……何故か一部男まで。

『そうだな』
と横で立っていた彰人は少し考え、

『じゃあ、末広がりの八』
と言う。

 小春は、手にしていた、あ、末広がりの八、とちょっと喜んでいた手書きの紙を投げ捨てそうになった。
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