私、あなたを呪ってマス! ~こちびOLと凶悪な先輩、芹沢彰人の日常~
 だが、そうして、真っ直ぐに、疑うことなく生きられるのは、恵まれた人生を歩んできたからだろう。

「……ま、傷つくけどね」
とあまりこちらを見ずに言って、井川はエレベーターに乗り、行ってしまう。

 でも、もしかしたら、今のは後から考えたことなのかもしれない、と思った。

 彰人を嫌いになりたくないから、後から考えた理由づけでは。

 なんだかんだ言っても、井川は彰人が好きなのだろう。

 支社に居たから、そんなに交流はなかったが、自分も彰人のことは嫌いではない。

 恵まれすぎて、たまに癇にさわることもあるが。

 さっきの井川のように、給湯室の方を見ながら呟いた。

「彰人が小春をね……」

 単に面白いからからかっているのか。

 多少は気があるのか。

 並み居るお色気美女を押しのけて、小春を選んだら、それはそれで彰人を見直すような。

 そうでもないような……。

 ま、ああ見えて、小春、実は美人だしな。
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