私、あなたを呪ってマス! ~こちびOLと凶悪な先輩、芹沢彰人の日常~
「……小春、なにやってんだ?」
柱の陰からエレベーターの方を覗いていた小春の後ろから誰かが声をかけてきた。
ぎくりとして振り返る。
「サボってんなよ、仕事しろよ、仕事」
そこに居たのは、菅野英一朗(すがの えいいちろう)だった。
菅野は確か、彰人と同期だが、この間の人事異動までは、ずっと支社に居たので、それほどの交流はないようだった。
小春は菅野を見ながら、イケメンってのは、この程度でいいんだよな、と失礼なことを考えていた。
いや、菅野も昔から人気のある男だったが、気さくで、彰人のように「様」づけで呼ばれるような男ではない。
同じイケメンでも、崇め奉られるか、親しまれるかの差は、顔の差というより、オーラの差かな、と思いながら、大きな彼を見上げる。
「なにしてたんだ?」
と菅野は先程、小春が柱にしがみついていた位置まで屈み、その視線の先を追ってみたようだった。
「……お前、まさか、彰人を見てたのか?」