明日の君に手を振って

前に進みたいと思った。
だから、街コンに参加した。
それは間違いないはずなのに。
気がつけば、同じことの繰り返しをしている。
私らしさって、何?

「お待たせいたしました」

店員さんが持ってきてくれたパンケーキが甘く香る。
優しい暖かさが届く。
それはさっきの、仁科さんが口にした言葉のようだ。

そっと切り取り、ひとくち口に入れればしゅわりと溶けてクリームとメイプルシロップがしつこくない軽い甘さをつれてくる。
凝り固まっている心の奥を溶かしてくる。


甘いものが好きだ。
少女漫画が好きだ。
ペアの物も持ちたいと思うし、ひとりの時間はないとダメだけど、好きだって言ってほしい。
頭に血が上りやすくてケンカっ早い。


だけどそれが偽りなく本当の自分だ。

「クールビューティーがなんぼのもんさぁ……」

誰に聞かせるわけでもなく呟いたはずなのに。

「あんたはクールビューティーって感じじゃないな」

返ってきた返事にビクリと肩を震わせた。

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