明日の君に手を振って

思い出すとプツ、と未だに頭に来る。
ダスン!と目の前のテーブルにグラスを叩きつけた。
周りの視線が冷ややか。
ああ、しまった。
ここは自宅なんかじゃなくて、洒落たカフェの、それも若者の集う場だった。
焦って自分を取り繕う。

「ゴホンッ」
「そんな取り繕ったって今さらでしょー」

隣から聞こえた可愛らしくも憎らしい声は聞かなかったことにする。


受付を済ませて会場内に入ると、人で溢れかえっていた。
店内に備え付けられている大きなオシャレな(読みにくい)壁掛け時計によると、乾杯まではまだ15分ほどあるのに、一応はやはり皆、社会経験があるんだな、きっと。
日本人て律儀。

はーッと大きなため息が出た。
彼氏と別れてから10日程。
自分が大切にしていたものは、どうやら相手にとってはどーだっていいことだったらしい。
そんなこと、知ってたはずなのに今さら改めて思い知らされた。
その瞬間、恋は冷めた。
だから次の一歩を踏み出すために、早々に手を打った。それが、コレ。

いわゆる“街コン”だ。

< 2 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop