いとでんわ~君と繋がる赤い糸~
好きな人
「じゃあ、これ」
突然、紙コップに赤い糸がついた物を
渡された。
「糸電話?」
「耳、つけろ」
糸電話に耳を傾けた。
『もしもし、聞こえるか?』
「うん、聞こえる」
『少しは落ち着いたか?』
「うん」
圭が糸電話で話しかけて、
私はそのまま答えた。
『よく聞こえないからって、神経擦り減らしてまで聞かなくていいんだぞ』
「別に、そんなこと」
『イライラしてまで聞くことじゃねぇよ。
聞こえ悪いなら、側にいて話しかけるし、
こうして話すことも出来る。
だから、あんまり自分を責めるな』
周りの人には気を使われ、大丈夫と励まされた。
けど、誰も私の気持ちは分かってくれなかった。
いや、欲しい言葉をくれなかった。
なのに、何故、圭はこうも簡単に
欲しい言葉を与えてくれるんだろう……。
そんなこと言われたら……、
また泣いてしまうじゃないか。