部長っ!話を聞いてください!
3、貴方を思って選びたい
「はぁ。気持ちいい」
店頭に置かれている楕円形のクッションを撫でまわしながら、うっとりとため息をついた。
「これ欲しい」
気持ちをぽつりと呟き数秒後、私はハッとし、慌ててクッションを元の位置へと戻した。
「あぁ。だめだめだめ」
部長の誕生日プレゼントを買いにショッピングモールへ来たのに、ついついクッションの滑らかな触り心地に夢中になってしまっていた。
これだけでない。さっきから私はずっと、可愛らしい雑貨や気になる洋服(女性もの)に足を止めてばかりなのである。
自分の買い物に来たわけではない。
プレゼント選びに集中しないと、時間だけが過ぎていってしまう。
「よし」と両拳を握り気合を入れてから、私は歩き出した。
手近な店を眺めながら、プレゼントは何が良いかなと考えを巡らせる。
でも、部長の好みも分からない上に、年上男性の喜びそうなアイテムもよく分からないため、そこから先が何も思いつかない。
バッグに視線を落としながら、姉に相談してみようかな、なんてことを考えた。
昼間、変なメールをしてきたあの姉は、男っ気のない私と違い、つねに彼氏がいて、その上、男の友達もたくさんいる。