部長っ!話を聞いてください!
バイトをして貯めたお金で買った服やバックを、「借りるね!」の軽い一言で持って行かれ、それ以来返してもらっていないのだ。
私は働き出すと同時に実家を出てしまったから、給料の中でやり繰りしながら生活している。
姉は実家にいることもあって、金銭的な苦労はしていない……と思う。
一人暮らしを始めて以降は、私の物を持って行くなんてことはなかった。
だからすっかり油断していた。
昼間のメールは、服か何かを借りに行きたいのメールだったのかもしれない。
でも、私が帰宅は遅いと言ったから、実家に預けてある合鍵を使って、私の家に侵入し、クローゼットの中を物色していた。
もしそうだとしたら、姉を逃がすわけにはいかない!
オートロックを解除し、急ぎ足でエレベーター前へと進んでいく。
私の住んでいるマンションは六階建てで、今エレベーターは五階で停まっている。動いている気配はない。
私はエレベーター前を通りすぎ、そのまま外階段へと出た。
住んでいるのは二階だし、もし姉が逃げ出そうとしているなら、階段を使う気がした。
そう思って階段を駆け上がったけれど、誰の姿も見かけることなく、私は二階の廊下へと到着する。
私の部屋は202号室。廊下側に面した窓からは室内の明かりが漏れている。