部長っ!話を聞いてください!
私は姉の腕を掴んで、手の平を差し向けた。
「返して」
「え?」
「合鍵!」
「……えー。困る。合鍵元の場所に戻さないと。持ちだしたこと気づかれちゃったら、お母さんに怒られちゃうよ」
怒られてしまえ。
私は姉を睨みつけたまま、「返して」と繰り返した。
姉は困ったように肩を竦めてから、テーブルの上に置いてあるバックの中から鍵を掴み取り、私の手の平の上に落とした。
「でも、愛由花やっぱり……」
姉は返した鍵を切なそうに見つめたのち、再びそれを掴み取ろうとする。
私はぎゅっと鍵を握りしめ、返すつもりはないと首を横に振った。
男性はシャツを着て、そしてベルトもしっかり締めてから、「真菜花」と姉を呼んだ。
「これ以上、妹ちゃんを怒らせたくないし、帰ろうぜ」
姉はもう一度鍵を握りしめる私の手へと目を向けてから、諦めたのか「はぁい」と力なく返事をした。
「お邪魔しました~」
軽い口調で言いながら、私の前を男が通り過ぎていった。
「ね、愛由花、お父さんとお母さんに、このことは内緒にしててね。お願いだよ!」
姉はその後に続きながらも、私の方を何度も振り返り、そんなお願いする。