部長っ!話を聞いてください!

私は何も言葉を発しないまま、二人が家から出て行くのを見ていた。

ぱたりと、扉が閉まり、静寂が広がる。やっと、自分の空間が戻ってきた。

けど部屋を見回せば、姉とあの男性の熱気が至る所に残っているような気がして、私は窓へ向かう。

部屋の空気を換気しようとしたけれど、「あー」と声が出た。

そうだった。窓はすでに開いていた。

私は持っていたショッピングバックと合鍵をパソコンデスクにそっと置いて、代わりに消臭スプレーを手に取った。

シュッとひと吹きすると、甘い香りが広がった。

新たに生まれた香りが、先ほどまでの時間と自分の気持ちを切り替えてくれる。

何度か吹きかけてから、今まであえて見ないようにしていたベッドと向き合った。

出社前に綺麗に整えていったはずの掛布団やシーツがぐちゃぐちゃになっている。


「もうっ!!」


気持ち悪くて眠れないじゃないか。

私はベッドに向かって、怒りを込めながら消臭スプレーを連射し、肩を落とした。

姉は性に関しても、自由奔放なのである。

妹の私が一人暮らしをしていることに対して、姉はずっと羨ましいと、ずるいと言っている。


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