部長っ!話を聞いてください!
悔しいくらい良いところだったのに、ベッドから落ち、鼻を強打し、夢から醒めてしまった。
「もう一回寝たら、今の続き見れるかな。見たいなぁ」
恨めしげにベッドを見ると、ちょうど枕元にあるスマホのアラームがなり始めた。もう起きる時間らしい。
今日は平日。これから仕事。もちろん二度寝などできない。
私は立ち上がりながらスマホを掴み取り、鳴り続けているアラームを止めた。
「あとちょっとで部長の腕の中だったのに」
文句を言いながら、きっちり閉めてあるカーテンへと歩いていく。
ざっと小気味よい音を立てて勢いよくカーテンを開けると、真っ青で澄んだ空が見えた。
からりと窓を開け大きく伸びをすると、ふて腐れ気味だった気持ちが和らいでいった。
私はスマホを操作し、以前撮った写真を画面に呼び出す。
慰安旅行で撮ったそれに映っているのは、神崎部長とその他大勢。
見つめていると、だんだんと口元が緩んでいく。
宿の浴衣を身にまとった部長は、何度見ても色っぽい。
「……もう、部長っ!」
本当に色っぽい。
何でこんなにカッコいいんだろう。
夢も良いけど、やっぱり生身の部長に会いたい。
――……大好き。
「部長ーーーっ!」
スマホをぎゅっと抱きしめて、私は大きく叫んだのだった。