部長っ!話を聞いてください!
昨日の事を引きずってなどいられない。今日は部長の誕生日なのだから。
私は口元に笑みを浮かべて、歩き出した。
部長、喜んでくれるといいな。
エレベーターをちらりと見て、私は慌ててボタンを押した。
たいていは上階にあり、待っている時間がもったいないので、そのまま階段で降りていってしまうのだが、ちょうど三階で停まっていて、なおかつ下降中だったのだ。
今日は朝からついている。
ショッピングバックの中に見える可愛らしいリボンを見つめていると、エレベータの扉が開いた。
顔を上げ、エレベーターに乗りこみながら、私は先に乗っていた男性に「おはようございます」と挨拶をした。
男性から「おはよう」と声が返ってきた。
そのまま回れ右をし、扉と向き合い、先客の男性に背を向けたのだけれど――……私はエレベーターが下降を始めると同時に振り返った。
「ぶっ、部長っ!?」
私の後ろに立っているのは、まさに、神崎部長その人だった。
「ど、ど、ど、どうしてここに?」
「どうしてって、俺もこのマンションの住人だからだよ」
「えっ?……えぇっ!?……す、住んでたんですか!?」
言いながら距離を詰めると、即座に部長の眉根が寄る。おまけにコホンと咳き込んだ。