部長っ!話を聞いてください!
6、部長が冷たくて泣けてくる
電車の発車ベルが鳴り響く中、私はなりふり構わず、車両内へと駆けこんでいく。
「……良かった……やっと……やっっと、追いつきました」
私は荒く息を弾ませながら、乗車口近くで手すりにつかまり立っていた部長の腕を掴んだ。
車両内はそれほど混んでない。
座席は埋まっているけれど、立っている乗客はそれほど多くない。
「良く間に合ったな」
部長は息も絶え絶え状態の私を呆れ顔で見ている。
駅まで走っていたはずなのに、部長の表情から疲労感が滲み出ていない。
十歳も若い私の方がヘロヘロだ。
動き出した電車の揺れで、足元がふらつく。
部長の腕を掴み直し体勢を立て直しつつ、深呼吸を繰り返して呼吸を整えた。
「部長と、話がしたいので、必死で走りました」
私がそう言った途端、部長が疲れきったような顔をした。おまけに露骨に顔をそらされてしまった。
泣きたくなるのを堪えるように、私は部長の腕を掴む手にぎゅっと力を込めた。
とにかく話しを聞いてもらいたい。
部長の誤解を解きたい。
そのために、絶対この手を離さない。
それに電車に乗ってしまえば、さっきみたいに逃げ出せないと部長だって分かっているだろうし、ちゃんと私と向き合ってくれるはず。