部長っ!話を聞いてください!
カーテンが開けられているため、部屋の明かりが逆光となり、顔をはっきり見ることが出来なかったけど……たぶん部長本人だと思う。
どちらにせよ、部屋の明かりがついているのだから、在宅ということに間違いはないだろう。
「いざっ!」
大きく息を吸い込み、意気込みと共に歩き出そうとした時、視界を大きな影が塞いだ。
「わっ、すみません」
目の前の男性とぶつかりそうになり、私は慌てて横にずれた。
けれど、目の前の彼もまた、私と同じ方向へと移動する。
それが繰り返される。
同じ方向に避けてしまっていると思っていたが、そうではなかった。
避けようと横に移動し、私が歩き出すの邪魔するかのように、男性が移動を繰り返しているのだ。
何なんだと怒りを込めて睨みつけると、男性がニヤリと笑った。
「どうしたの? 声ガラガラじゃん!」
「……あっ!!」
その下卑た笑みが私の記憶を呼び起こした。
目の前にいるのは見知らぬ男ではなく、昨日、私の家に姉と共に不法侵入した男だ。
「こんばんは~! 昨日は迷惑かけちゃってごめんね~」
「なんですか? 私、帰りたいんですけど」
思いっきり眉間にしわを寄せながら、周りを見回した。