部長っ!話を聞いてください!
聞こえてきたワードに、体が反応してしまった。
お箸をランチクロスの上に叩くように置き、勢いよく後ろを振り返った私を見て、神崎部長が驚いた顔をした。
「部長っ! 明日誕生日なんですか!?」
重大で重要な事実を、聞き過ごすことなどできなかった。
私は椅子から腰を浮かし、やや前のめり気味に問いかけた。
「あぁ」
そんな私に、部長が苦笑する。
「おめでとうございますっ!」
「この年になると、あまりめでたくはないけど……土屋、ありがとう」
声を大にして言うと、部長が笑顔になってくれた。私も嬉しくなってしまう。
胸をドキドキさせながら、笑みを浮かべていると、突然、目の前に人が割り込んできた。
一瞬で部長の姿が視界から消える。
「えぇっ!? 神崎部長、明日誕生日だったんですか!? 初耳ですよ! 何で教えてくれなかったんですか!」
「神崎部長、おめでとうございます! プレゼント何が良いですか!?」
割り込んできたのは、同じ企画・経理課の先輩女子社員。
ふたりとも、神崎部長のことを気に入っている。
「良いっすねぇ、部長。この様子だと少なくとも三人からプレゼントもらえそうじゃないですか! 俺ののど飴なんか要らないっすよね」
「おいおい、なに拗ねてんだよ、吉田。有難くもらっておくよ。のど飴」