部長っ!話を聞いてください!

称賛する二人に向かって、部長はゆるりと首を横に振り否定する。


「プレゼントとか、そういうのは、本当に要らないからな」


プレゼントされても困るから。

部長がそんな眼差しを目の前の二人に向けている。


「えー、でも。部長にはいつもお世話になってるし」

「そうだよね。これからも良い関係でいたいもんね」


先輩女子社員二人組は、プレゼントする気満々なセリフを口にしたあと、小声でこそこそと言葉を交わしながら、場を離れて行く。

その背中を見つめて、部長が小さくため息を吐いた。


「モテる男は辛いっすね」

「バーカ。からかうな」


吉田くんのおでこに、こつりと拳を押し当ててから、部長が私を見た。

目が合ったことに、とくりと鼓動が跳ねた。


「土屋も気を遣わなくて良いからな」


本当はプレゼントしたいけど、それが部長にとって迷惑だというのなら、辞めた方が良いのかもしれない。

そう頭では分かっていながらも、気持ちは落ちていく。


「……はい」


しょぼんとしつつ小声で返事をすると、部長がゴホンと咳払いをした。



< 8 / 74 >

この作品をシェア

pagetop