もっと聞かせて うっとり酔わせて
千葉の答えにまったく理解できない瑠花は聞き返した。

「レフ?」

「カメラだ。一眼レフの。」

「新聞記者ですか?」

「ぷっ。なんでそうなる?」

「違うんですか?」

「会った時に話すよ。」

コクッとうなずく瑠花を見てから

千葉は車両の奥へ目を向けた。

一面黒い頭の絨毯にしか見えなかった。

ガチャッと音がしてアナウンスが流れた。

「お急ぎのところ大変ご迷惑をおかけしております。まもなく発車いたしますのでご注意ください。」

電車がスゥッと動き出した。

突然止まってから20分くらいは経った。

ギリギリ遅刻にならないか

もしくは途中の混み具合で間に合わないかだ。

瑠花は改札で延滞券をもらい忘れないよう気をつけた。

終点までやはり混雑し

朝礼には間に合わないと判断して

駅から会社へ電話で一報を入れた。

千葉は途中の駅で降りたようだ。

もみくちゃ状態で彼とはぐれ

姿を見失ったからだ。

彼は新聞記者ではないのかしら?

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