もっと聞かせて うっとり酔わせて
今朝のくたびれたジーンズとヨレヨレのシャツではなく

ブルーのボタンダウンのワイシャツに黒の上下だ。

ネクタイは見たことがないほど

素敵な色合いの淡いパープルに

黒やブルーの何だかわからない模様が全体に入っていた。

朝はくせ毛のボサボサ頭だったのが

今はきれいに後ろへ撫でつけていた。

別人のような代わりようでも声だけは同じだった。

「何か変?」

横から瑠花に見られている気配はわかっていた千葉が口を開いた。

「新聞記者から議員秘書に代わってちょっと驚きました。」

「議員秘書?あっはっは。面白いな。」

「違うんですか?」

「全然違う。」

「本当の正体は何ですか?」

「正体?あっはっは。ますます面白い。」

「なんで笑うんですか?」

「瑠花が面白い事ばかり言うから。」

「私はいたって真面目です。」

「あっはっは。」

「千葉さん、笑いを止めてください。」

「あっはっは。」

「もう。」

瑠花はプイッと横を向いて窓の外を見た。

「悪い悪い。おごるから許してくれるだろ?」

瑠花はお腹が空いてはいたが

自分がしゃべるたびに笑われては会話にならない。

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