もっと聞かせて うっとり酔わせて
2度目はやはりギュウ詰めの朝の電車内だった。

いきなり股間に手を感じ

服の上からでもその厭らしい動きに頭の中が真っ白になった。

痴漢はすぐに手をどけたが

相手の手が離れても

脳内に記憶されたあの指の動きに怒りが沸騰した。

そんな訳でそれ以来間違っても普通車両には乗らないようにしていた。

ところが災難は忘れたい時にもやって来るとは知らなかった。

近隣路線にトラブルが発生し

瑠花が利用している地下鉄に

いつもとは違う通勤客がなだれ込んできた。

途中駅では改札内で入場制限までするくらいの混みようだ。

優雅な女性専用車なんてあり得なかった。

瑠花はドアが閉まる直前すき間にサッと乗り込んだ。

こういう時は小柄な体型だとラッキーだ。

次の駅で一度降り

再び乗る時に車両の奥へササッと入った。

連結部分に近い所までだ。

少しは息苦しくない状態で立つことができた。

但し回りを男性に囲まれ

嫌な予感がした。

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