もっと聞かせて うっとり酔わせて
「どうした?気分でも悪いのか?」

瑠花は彼のその声でさらに縛られたように凍結してしまった。

「おい。」

千葉の呼びかけに瑠花はハッとしてまぶたをまたたいた。

「失礼しました。」

「いつもそうやって放心状態になるのか?」

千葉は瑠花の顔をまじまじと見て

また片方の眉を上げた。

「そうなのか?」

「そんなわけありません。」

瑠花はプイッと横を向いた。

「面白いな。」

瑠花は千葉の渋い声にうっとりするのと

からかわれてムッとするのとで忙しかった。

「止まったままじゃどうにもならないな。そうだろ?」

瑠花はコクッとうなずいて

もっとその声を聞いていたいと目で訴えたが

そんなことは通じるわけがない。

ガサガサとマイク音がしてアナウンスが流れた。

「お急ぎのところ大変ご迷惑をおかけしております。只今車両を点検中です。」

音声はガサッと切れた。

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