素直になれば
夏休みの間、あたしと啓太君は頻繁に会っていた。
正確にいうと、週2回サッカーの練習を観に行き、週2回ははどっかでデートしていた。
デートと言っても、啓太君は受験生だったから、夏季講習の帰りにお茶したり、時々は図書館に行ったりする真面目な(?)デートがほとんどで、たまに映画を観たりって感じのものだ。
啓太君はなんでもよく知っていて、あたしのとんちんかんな質問にもいやな顔せず答えてくれる。サッカーや他のスポーツのことはもちろん、政治や経済、株のこと、PCにも詳しい。
決して知ったかぶりしたり、馬鹿にしたりしないからあたしはいつも素直にいろんなことを聞いていた。

『啓太君ってば、なんでも知ってるクイズ王みたいだね。リスぺクトもんです』あたしが感心すると
『じゃあ、理子ちゃんの質問に全問正解したら、キスしてくれる?』
真顔でそういう啓太君の瞳をみて、一瞬どきっときた。
『え、あ、でもほら、答えが正解かどうか判断できないじゃない』
あたしはしどろもどろになった。
『あはは、そうだな』
それでいつもの啓太君に戻った。

キスって言葉にドキドキした。あたしたちはまともに手をつないだこともないのに。
真美どうしてるかな、、、なんとなくあの幸せいっぱいの真美の顔を思い出した。
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