素直になれば
真美の言う通りサッカーの練習は女の子の見学が異様に多くて、その大半が啓太君目当てだっていうのはすぐにわかった。圧倒されるような声援だったから。

あたしは啓太君の彼女だっていうのを自慢したい気持ちを持ちつつ、ばれたらやばいかもなんて考えていた。
でも、啓太君はそんなこと気づかないかのようにあたしに手を振ったり、笑顔を送ってきたりする。何日か通っているうちにだんだん回りの女の子のあたしへの視線が冷たいものになってきて、自然とあたしは少し離れて一人でいることが多くなっていた。

練習を観ていると、啓太君の姿を追うのと同じくらい広田君の姿を探してしまう。
そして、広田君には啓太君とのことを知られたくないって気持ちになる。だって、広田君にコクってすぐに平気で違う人と付き合っているって思われたくなかった。
にしても、啓太君の練習を観に来ているのに広田君のことを考えるってよくないよね。あー自己嫌悪に陥るなー。

ってぼんやりした瞬間
『理子ちゃん危ない』って啓太君の大声がして
『えっ』
振り向いた時サッカーボールと広田君の顔が見えた。

『、、、理子ちゃん、気がついた?』啓太君の顔があたしの顔の真近にあった。
『あれ、あたし、、、』何故かあたしは保健室のベッドに横たわっていた。
『ボールが頭にあたって、軽い脳しんとうを起こしたの。でも、もう大丈夫だと思うわ。どう、起きられるでしょ?』保健の先生があたしをみてそう言った。
『あ、はい、大丈夫です』ちょっとふらついたけど、別になんでもなさそう。
『念のためおうちまで、誰かにおくってもらうといいわ』先生のその言葉を受けて

『本当は俺が送りたいけど、練習を抜けるわけに行かないから、広田に送らせるよ』
って啓太君が言った。
えっなんで広田君?!
『広田は理子ちゃんをそんなめにあわせた張本人だからな』
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