素直になれば
広田君は『よしっ!サッカーを教えてやるよ』って言って、ボールを蹴る真似をした。
ひとりでドリブルしたり、『シュート』って叫びながら足を大きく蹴り上げりしている。
にこにこ見ているあたしに向かって
『ほらっ、パスが行くぞ』ってこっちに向かって走りながら、1回蹴った。
ええーっ!?。でもあたしもつられて
『あ。はい』って小走りにボールを追うまねをした。いつのまにか右横に来た広田君に
『今だ!ゴール!』って言われて、蹴ろうとした瞬間、サンダルがズレてバランスを崩した。
『危ない』
次の瞬間あたしは広田君に支えられていた。抱きかかえられるようにして。

そして一瞬、何もかもが止まったんだ。風も回りの人の動きも、子供の声も。
広田君があたしをぐっと引き寄せて、黙ったまま瞬きもせずにあたしを見つめた後、あたしは広田君にキスされた。真夏の明るい公園で。
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