素直になれば
ママから携帯に電話があることって滅多にない。彼女は簡単な用事はたいがいメールで済ませる。

だから、啓太君と一緒にいる時ママからの電話に、あれっ?って思った。

『理子、パパが大変なの。倒れたの。ママはこれから病院に行かなきゃならないんだけど、お願い理子も来て。ママひとりじゃ不安で』

えーっ!いきなり何?!
ママはかなりパニクってて、こっちの質問にはまともに答えられない状態で、とにかくあたしは病院に行かなきゃって、やっぱり焦っていたんだと思う。

そんなあたしに、啓太君は
『その病院、親父の勤めている病院だから、俺も一緒に行くよ』って
すぐタクシーを拾って、あたしを押し込んで自分も乗り込んだ。

パパ死なないで。
タクシーのなかであたしは頭ん中で、そればかり繰り返してた。

そして、あたしの手を力強く握る啓太君の手を、あたしもぎゅっと握った。

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