素直になれば
『雨宮啓太です』
あたしがママに紹介する前に、啓太君は1歩前に出てママにおじぎをした。

ママはおじぎを返しながら
『雨宮さん、、?』ってちょっと首をかしげた。
『あ、ごめんなさい。パパの担当の先生も雨宮さんだから、妙な感じがして』

『それ、親父です。』
啓太君がそう答えたから、ママだけじゃなくって、あたしもビックリした。
そういえば、さっき『親父の勤めている病院だから』って言ってた。

『ね、パパは大丈夫だよね?』思わず啓太君を見つめたけど、
お医者さんは啓太君のお父さんで、啓太君にはわかるわけない。

でも、啓太君のお父さんがパパの担当医ってわかって、意味なく少し安心した。

結局パパは、早期対応と【TPA】のおかげで、後遺症もなく、1週間程度で退院できるらしい。病室のベットに横たわるパパは、いつもと違って、少し力の抜けた弱々しさはあったけど、端から見る限り元気を取り戻している。

パパの病室で会った啓太君のお父さんで、パパの担当医の雨宮先生に
『あなたが理子さん?最近啓太が真面目に勉強しているのは、あなたのおかげのようだね。』ってあたしに声をかけた後、パパに向かって
『息子の啓太がのぼせるのも無理ないですね。綺麗でお父さん想いの優しいお嬢さんですからね』ってにこにこした。

パパは恐縮したように
『いや、、、こちらこそ、、』なんて返事にもならない返事をした。
ママはママで
『雨宮先生の息子さん、礼儀正しいし、あんたにはもったいないほどカッコいいわね。』なんて嬉しそうにあたしに言う。

んなわけで、あたしと啓太君の距離は本人たちの意識とは関係なく、家族を巻き込んで急接近していた。

ま、もちろんあたしも、パパの入院騒動に啓太君が側にいてくれて、本当に心強かったし、ずっと頼りっぱなしだった。
啓太君はほぼ毎日お見舞いに来てくれて、なにかと気遣ってくれたから、パパの病院生活は居心地よかっただろうと思う。

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