君をまとえたら
セナは前々から目をつけていたのか3品くらい手に持っていた。

「ここに来るとどれも欲しくて迷っちゃう。」

すると店長が俺より先に答えた。

「セナちゃん、今日は彼氏が奮発してくれそうだよ。私も嬉しいねぇ。」

と言いながらセナにウインクしていた。

おいおい、店長。

「香取さん、本当にいいんですか?」

「もちろん。そのつもりだったから大丈夫だ。」

「ありがとうございます。」

セナは藍地に虹色の絞りが入ったポーチを

しきりに眺めては

口元を緩めて目尻に可愛いシワを浮かべていた。

「気に入った?」

俺に期待の眼差しを向けて

コクコクとうなずいた。

「他には?」

「これとこれなんですけど。」

手の平にはサビ色に白い絞りが一点入ったミニチュアの本のストラップと

スモークピンクが渋い感じにグラデーションされた扇子だ。

「セナらしいセレクトだね。」

「ありがとうございます。」

レジに立つ店長がにんまりするのを

俺は横目でしっかり確認した。

俺たちが昼休みだとわかっている店長は

それらを手早く包んでセナに手渡した。

俺は会計を済ませ

店長と意味深な目線を交わして店を出た。

セナはのれんの外で腕時計をのぞき

時間がまだあることにホッとしていた。

「戻ろう。」

「はい。」

充実した昼休みを過ごせて

俺はハッピーな気分だった。

社まで歩きながらつくづくそう思い

次はいつ会ってくれるか模索した。

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