君をまとえたら
「香取さん、決めに決めたので行きましょう。」

次のショップへ移動だ。

通りに出たらセナに腕を引かれた。

「ん?」

「これは香取さんへのプレゼントです。」

「俺に?」

「京都に連れてきてくれたお礼です。」

俺は泣きたかった。

心の中で嬉し泣きだ。

「開けていい?」

「はい。」

包みを開けた。

ごく薄い朱色に桜色の小さなフラミンゴが散りばめられたサラシだった。

「セナ、ありがとう。すごく気に入った。自分じゃ選ばない色だ。」

「良かったです。」

彼女の明るい笑顔を脳裏に焼き付けた。

それが京都の唯一本当のみやげだ。

セナの前では萎縮してしまうことが俺の悩みになった。

他の女の前では俺様流を200%ぶちかますのに比べ

彼女に対してはこんな風に腰の低い優男になってしまう。

どうしてだろう。

その答えは永遠にわかりそうにないと思ったが

京都から帰った夜

ベッドに身を投げてセナと過ごした時間を

頭の中で巻き戻したらわかった。

俺はセナが好きだということを。

好きで好きで

気が狂うほど好きになってしまったのはいいが

男としての浅ましい考えを隠して

うわべだけ良い男面を見せていた。

それじゃダメだ。

俺の本心や素顔をさらけ出さなければ

セナに対してフェアじゃない。

俺が素を見せたら

彼女も教えてくれるだろうか。

俺が知っているセナ以外の

俺の知らないセナを

知らない部分でさえも好きでいたいから

それを埋めてくれるだろうか。

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