あの日見上げた星空
けたたましい目覚しの音に若干の苛立ちを覚えながら、朱音は目覚しを止めた。
起き上がると、カーテンの隙間から眩しい光が差し込んでいる。

今日が始まったのだ。

欠伸をしながらベッドから降りると、勢いよくカーテンを開ける。
一層眩しい陽の光に目が眩む。
朝は強くない。
いつからだろうか、子供の頃は目覚しが鳴る前に起きて、朝の陽射しを浴びることに幸せを感じていたのに。
そんなことを思いながら部屋を出ると、階段を降りていった。
「おはよう。」
リビングには、新聞を読みながらコーヒーを啜っていた父親が、振り返りながら小さく返事した。
「あぁ…。」
いつもこんな感じだ。
昔から無口で愛想のない父。
子供の頃はもう少し笑っていた気がするが、ここ数年、笑った顔を見ていない。
「朱音、早くご飯食べちゃいなさいよ!」
それとは打って変わり、母はよく喋る人だ。
明るくて、いつも笑顔な印象がある。
どうしてこの2人は結婚したのかと、常々思う。
目の前に置かれたトーストを齧りながら、大きな画面に映し出された深刻そうな顔をしたアナウンサーがニュースを読んでいるのを聞く。
相変わらず物騒な世の中なことで……。
私は目玉焼きに手を伸ばそうとすると、玄関の鍵が開く音と廊下からドカドカと騒々しい足音が聞こえてきた。
「朱音!また振られた!」
入ってきた長身の男は、真っ先に私のところへ駆け寄ってきた。
見た目はピアスやら今時な明るい髪の色をしているそいつは、今にも泣きそうな顔をして私の膝に顔を埋める。
「またなの、あんた。」
もう慣れてしまったいつもの行動に、私は気にも留めず、目玉焼きを口に入れた。
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