黄金の覇王と奪われし花嫁
◇◇◇
「とことん頑固な娘だな、お前は」
くつろいだ様子で目の前に座りこんだ男は呆れた顔で苦笑している。
ユアンは白地に金糸と銀糸の刺繍が施された美しい衣装を身にまとっていた。
髪は高く結い上げられ、首にも耳にも豪華な宝飾品が巻きつけられている。
象牙のように滑らかな肌と黒曜石のような瞳を持つユアンにその衣装はよく似合っていたが、当の本人は不満でいっぱいだった。
こんな衣装ではなく、母様の形見の真紅の衣装を身につける筈だったのに。
こんな蛮族の男ではなく、強く優しいシェンという名を持つ男に嫁ぐ筈だったのに。
そして何よりも、私の婚礼には父様と兄様も同席し祝福してくれる筈だった。
考えれば考えるほど、目の前の男が憎らしくてならない。
しかし、ユアンは先程この憎らしくて堪らない男と婚礼の儀を済ませ、正式な夫婦となった。
今宵はいわば新婚初夜だ。
「俺に抱かれるのがそんなに嫌か?」
何が可笑しいのか、くっくっと笑いながらバラクが尋ねた。
「死んだ方がマシだと、最初から言っています」
ユアンはバラクと決して目を合わさず、吐き捨てるように言った。
「俺が部族の仇だからか?」
部族だけでなく、婚約者の仇でもある。
ユアンはそう思ったが、口には出さなかった。
「わかっているのなら、聞く必要ないでしょう」
「風の民の女のほとんどはお前と同じような運命を辿っている。父の、夫の、子の仇の妻となる。
それでも、生きて子を産み、血を繋げていく。それが女のさだめだろう」
ユアンは顔をあげ、正面からバラクを睨みつけた。
「私は誇り高きシーンの娘。私のさだめは私が決めます」
「とことん頑固な娘だな、お前は」
くつろいだ様子で目の前に座りこんだ男は呆れた顔で苦笑している。
ユアンは白地に金糸と銀糸の刺繍が施された美しい衣装を身にまとっていた。
髪は高く結い上げられ、首にも耳にも豪華な宝飾品が巻きつけられている。
象牙のように滑らかな肌と黒曜石のような瞳を持つユアンにその衣装はよく似合っていたが、当の本人は不満でいっぱいだった。
こんな衣装ではなく、母様の形見の真紅の衣装を身につける筈だったのに。
こんな蛮族の男ではなく、強く優しいシェンという名を持つ男に嫁ぐ筈だったのに。
そして何よりも、私の婚礼には父様と兄様も同席し祝福してくれる筈だった。
考えれば考えるほど、目の前の男が憎らしくてならない。
しかし、ユアンは先程この憎らしくて堪らない男と婚礼の儀を済ませ、正式な夫婦となった。
今宵はいわば新婚初夜だ。
「俺に抱かれるのがそんなに嫌か?」
何が可笑しいのか、くっくっと笑いながらバラクが尋ねた。
「死んだ方がマシだと、最初から言っています」
ユアンはバラクと決して目を合わさず、吐き捨てるように言った。
「俺が部族の仇だからか?」
部族だけでなく、婚約者の仇でもある。
ユアンはそう思ったが、口には出さなかった。
「わかっているのなら、聞く必要ないでしょう」
「風の民の女のほとんどはお前と同じような運命を辿っている。父の、夫の、子の仇の妻となる。
それでも、生きて子を産み、血を繋げていく。それが女のさだめだろう」
ユアンは顔をあげ、正面からバラクを睨みつけた。
「私は誇り高きシーンの娘。私のさだめは私が決めます」