黄金の覇王と奪われし花嫁

「ユアン。お前は俺に父親を、仲間を殺されてどう思った?」

「どうって・・悔しくて、悲しくて、死んでしまいたかったわよ」


「そんな思いをする人間をなくすには、部族という概念をなくすしかない。
風の民という一つの部族にするんだ」


その考えは素晴らしく、正しいのかも知れない。
けれど、ユアンは素直に頑張ってなどと言える性格でもなかった。

「戦をなくすために戦をするの?
何だかおかしな話だわ」

ユアンの言葉に、バラクはほんの少しだけ傷ついたような顔をした。

が、すぐに強気な顔を取り戻した。

「そうだ。 弱い者がいくら正義を語っても無意味だ。
望みを叶えるためには力が要る。
だから、俺は誰にも負けないだけの力を手に入れる」

ユアンはバラクから顔を背けた。

「私には関係ないわ」

バラクはユアンの顎をつかむと、クイと自分の方に向けた。
黄金の瞳と間近で視線がぶつかる。

「関係あるな。お前はいつか俺が築く国の皇后になるんだ。きっと、それがお前のさだめになる」

「私のさだめは私が決めると言ったでしょう。 大体、なんで私にこだわるのよ?」

ユアンはずっと疑問だった。
なぜ、この男は自分にかまうのだろう。

トゥイのいう通り、シーン族の名に価値を感じているのだろうか。

「それはーー」

「それは?」

「俺がお前を気に入ってるからだ」

バラクはニヤリと笑うと、ユアンの頬に唇を寄せた。

「ぎゃっ」

「ははは。おやすみ、ユアン」

バラクは今日もユアンを抱くことなく、長布で仕切られた室を出ていく。


ユアンは口付けされた頬にそっと手をあてた。

熱い・・・

やっぱり嫌いだ、あんな男。

ユアンは強く自分の心に言い聞かせて、寝台に潜り込んだ。
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