黄金の覇王と奪われし花嫁
ウラール族での生活は穏やかに過ぎていった。

ユアンはバラクの財産の管理やオルタに次々やってくる女達の世話など、第一后妃としての仕事をこなしていた。

ウラールより大所帯だったシーン族で母や他の后妃達の仕事ぶりを見ていたから、やるべきことはよくわかっていた。


「ユアン様。 シュツガ族の女が4名ほど入ります。 どのようになさいますか?」

まだ少年と呼んでもいいほどに年若い男がユアンに指示を仰ぎにやってきた。

名前をタオと言う。タオは生まれつき視力が弱いそうだ。
そのため、戦には出ずウラール族の内政面の仕事を担っていた。
バラクは彼のことを弟のように可愛がっていた。

「年老いた者はこのオルタで受け入れます。シュツガ族は毛織物が得意なはずだから、教えてもらいましょう。
若い者には良い嫁ぎ先を探すわ。シュツガは名の通った部族、欲しがるところはたくさんあるでしょう」

「承知しました」

「本当は一人くらい、バラクの妻になって欲しいのだけど・・・タオ、あなたからバラクにそれとなく言ってみてくれないかしら?」

ウラール族は急激に勢力を拡大しているので、后妃の仕事も一人では手が回らないほどになってきていた。
よく働く后妃があと2.3人は欲しいところだ。

「それは無理ですよ。バラク様はユアン様以外を后妃に据えるおつもりはないようですから」

タオの言葉に、ユアンはしばし考えこむ。

「もしかして、私に対する遠回しな嫌がらせのつもり? 大量の仕事を全部一人でやってみろって事かしら?」
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