黄金の覇王と奪われし花嫁
「ただいま、ユアン。 元気にしていたか?」
バラクは戦から戻ってくると、いつも同じ台詞を口にする。
そして、小さな子供のようにユアンの膝を枕代わりにうたた寝をするのだ。
あっという間に寝息を立てはじめたバラクの端整な横顔を見下ろし、ユアンは小さく溜息をついた。
いつからだろうか。
バラクの『ただいま』を聞いて、ほっと胸を撫で下ろすようになったのは。
『行ってくる。留守を頼んだぞ』
そう言って戦に向かうバラクの後ろ姿を見送るのが辛くなったのは。
額にかかるバラクの黄金色の髪を、ユアンはそっと払ってやる。
「んっ・・・ユアン?」
バラクが身じろぎし、薄く目を開けた。
戦ばかりしているせいか、バラクは些細な物音や振動ですぐに目を覚ましてしまう。
「ごめん、起こしてしまったわね」
「いや。 いつの間にか寝ていたか?」
「ほんの少しね。 疲れているのだから、寝台を使ったら?」
ユアンは自分の寝台をバラクに譲ろうとしたが、バラクに引き止められた。
「いい。 俺はここが気に入っている」
本当に子供のようだ。 ユアンは苦笑し、そのまま自分の膝をバラクに貸し出すことにした。
「兵達がな、お前は風の女神の生まれ変わりだと噂している。 だから、ウラールは決して負けないと」
「根も葉もない噂は長であるあなたが責任を持ってやめさせて」
「根も葉もない噂でも、それで士気が上がるなら万々歳だ。 このままアリンナ中に広まって、敵の士気も下げてくれると尚良いんだがな・・」
バラクは戦から戻ってくると、いつも同じ台詞を口にする。
そして、小さな子供のようにユアンの膝を枕代わりにうたた寝をするのだ。
あっという間に寝息を立てはじめたバラクの端整な横顔を見下ろし、ユアンは小さく溜息をついた。
いつからだろうか。
バラクの『ただいま』を聞いて、ほっと胸を撫で下ろすようになったのは。
『行ってくる。留守を頼んだぞ』
そう言って戦に向かうバラクの後ろ姿を見送るのが辛くなったのは。
額にかかるバラクの黄金色の髪を、ユアンはそっと払ってやる。
「んっ・・・ユアン?」
バラクが身じろぎし、薄く目を開けた。
戦ばかりしているせいか、バラクは些細な物音や振動ですぐに目を覚ましてしまう。
「ごめん、起こしてしまったわね」
「いや。 いつの間にか寝ていたか?」
「ほんの少しね。 疲れているのだから、寝台を使ったら?」
ユアンは自分の寝台をバラクに譲ろうとしたが、バラクに引き止められた。
「いい。 俺はここが気に入っている」
本当に子供のようだ。 ユアンは苦笑し、そのまま自分の膝をバラクに貸し出すことにした。
「兵達がな、お前は風の女神の生まれ変わりだと噂している。 だから、ウラールは決して負けないと」
「根も葉もない噂は長であるあなたが責任を持ってやめさせて」
「根も葉もない噂でも、それで士気が上がるなら万々歳だ。 このままアリンナ中に広まって、敵の士気も下げてくれると尚良いんだがな・・」