黄金の覇王と奪われし花嫁
4章
「んっ・・」

喉の渇きを覚えて、ユアンはふっと目を覚ました。
隣を見れば、バラクが規則正しい寝息を立てていた。

いつの間にか、バラクの腕の中でユアンも眠ってしまっていたようだ。

天井からは一筋の光も差してない。
まだ夜中なのだろうか。

寝台の横に置いてある水差しを取るため寝返りをうとうとするが、バラクの腕にがっしりと拘束されていて身動きが取れない。

「もうっ・・・」

バラクの端正な寝顔をそっと盗み見る。
日に焼けた浅黒い肌、すっきりと通った鼻梁。伏せた睫毛は長く、濃い影を落としている。
ユアンを抱きしめる腕の力が緩む気配はない。

水を飲むのを諦め、再び眠りにつこうかとユアンが考えた時だった。

ドッドッドッ・・・

かすかだが、地面が振動するような気配を感じた。

これは・・・馬!?

ユアンはばっと寝台から跳ねるように起き上がった。

耳を澄まして音を拾う。


ドッドッドッ。 ドッドッドッ。

間違いない。
音はこちらに近づいている。

「どうした?」

目を覚ましたバラクが鋭い声でユアンに呼びかける。

「バラク、騎馬隊が近づいてきてる」

ユアンの言葉で全てを察したバラクの行動は素早かった。眠るときも常に傍らに置いてある剣と弓を手に取る。

「よく気がついたな。お手柄だ。
ユアン、すぐに隣のオルタのナジムを呼べ。危険なマネは絶対にするなよ」

逼迫した状況にも関わらず、バラクは余裕たっぷりにユアンに微笑みかけ頭をポンと叩いた。

「ダメっ。待って、バラク。あなた一人では危ないっ」

ユアンは必死に叫んだが、バラクは振り返ることもなく去っていった。

正確にはわからないが、あの音からして騎馬の数は少なくはないだろう。

ユアンの胸は不安でざわざわと蠢いた。
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