黄金の覇王と奪われし花嫁
◇◇◇
「うっ・・・」
身体を貫くように走った痛烈な痛みで、ユアンは目を覚ました。
いつもより天井が低い。ゆっくりと目だけを動かして状況を確認する。
見慣れない調度品、嗅ぎ慣れない香。
バラクのオルタとは何もかもが違う。
どうやら自分はあのままハカ族に連れ去られたようだ。
熱があるのか身体が熱く重かったが、命があるだけでも良しとしよう。
バラクやナジムは無事だろうか。
トゥイや女達は捕まっていないだろうか・・。
ユアンは寝台から起き上がろうとしたが、負傷した右肩に激痛が走ってとてもじゃないけど動けなかった。
「ーーほう。死んでなかったか」
室を仕切る長布の隙間から男が顔を覗かせる。ユアンの肩を刺し貫いた張本人、ネイゼルだった。
あの時、長剣を振り下ろすネイゼルは月明りの下でまるで死神のように不気味に見えたが、こうして日の光に照らされるとちゃんと人間だった。
黒蛇の名が示す通りの爬虫類のような暗い瞳が不気味ではあるが、顔立ちそのものは端整でどちらかと言えば女性的ですらあった。
「貴方が急所を外してくれたおかげね。感謝するわ」
ユアンの言葉をネイゼルはふんと鼻で笑い飛ばし、つかつかと寝台まで近づいてきた。
「・・・風の女神の生まれ変わりを名乗るには随分と貧相な身体だな」
ネイゼルはユアンの胸を鷲掴みにして、眉をひそめた。
「ーー余計なお世話よっっ。言っておくけど、私に何かを期待して連れてきたのなら無駄よ。残念ながらあんなのはただの噂」
ユアンは肩の痛みを必死に堪えながら、ネイゼルの手を振り払った。
「うっ・・・」
身体を貫くように走った痛烈な痛みで、ユアンは目を覚ました。
いつもより天井が低い。ゆっくりと目だけを動かして状況を確認する。
見慣れない調度品、嗅ぎ慣れない香。
バラクのオルタとは何もかもが違う。
どうやら自分はあのままハカ族に連れ去られたようだ。
熱があるのか身体が熱く重かったが、命があるだけでも良しとしよう。
バラクやナジムは無事だろうか。
トゥイや女達は捕まっていないだろうか・・。
ユアンは寝台から起き上がろうとしたが、負傷した右肩に激痛が走ってとてもじゃないけど動けなかった。
「ーーほう。死んでなかったか」
室を仕切る長布の隙間から男が顔を覗かせる。ユアンの肩を刺し貫いた張本人、ネイゼルだった。
あの時、長剣を振り下ろすネイゼルは月明りの下でまるで死神のように不気味に見えたが、こうして日の光に照らされるとちゃんと人間だった。
黒蛇の名が示す通りの爬虫類のような暗い瞳が不気味ではあるが、顔立ちそのものは端整でどちらかと言えば女性的ですらあった。
「貴方が急所を外してくれたおかげね。感謝するわ」
ユアンの言葉をネイゼルはふんと鼻で笑い飛ばし、つかつかと寝台まで近づいてきた。
「・・・風の女神の生まれ変わりを名乗るには随分と貧相な身体だな」
ネイゼルはユアンの胸を鷲掴みにして、眉をひそめた。
「ーー余計なお世話よっっ。言っておくけど、私に何かを期待して連れてきたのなら無駄よ。残念ながらあんなのはただの噂」
ユアンは肩の痛みを必死に堪えながら、ネイゼルの手を振り払った。