黄金の覇王と奪われし花嫁
◇◇◇

「帰る前に一度、私に抱かれてみるか?
あの男とどっちが良いか比べてみてはどうだ?」

着替えをするユアンの後ろで、くっくっとネイゼルは喉を鳴らして笑った。
むき出しになったユアンの肩に後ろから手を回し、そっと抱きよせる。

ユアンは抵抗せず、ふぅと大きく溜息をついた。

「バラクが死んだなんて、どうして嘘ついたのよ?」

「私は人の嫌がることを言ったり、したりするのが好きなんだ」

ネイゼルは心底、楽しそうに笑った。

「色々、すっかり騙されたわ」

「人聞きの悪い。別に騙してなどいないだろう」

「ネイゼル、契約違反だ。ユアンには二度と手を出さないという約束だろう」

眉間に皺を寄せたバラクがユアンの身体をネイゼルから引き剥がし、自分の方に寄せた。

「ふん、器の小さい男だな。 女同士で戯れることの何が悪い?」

ネイゼルは肩をすくめながらも、ニヤリと不敵に笑ってみせた。

「・・・女とわかっていても、なんかお前は嫌だ」

「・・・う〜ん。失礼かも知れないけど、やっぱり女とは思えないわ」

バラクとユアンは同時に声をあげた。

ユアンは今だに信じられないが、なんとネイゼルは女性だったのだ。
男性にしては華奢な身体つき、中性的な顔立ちだとは思っていたが、いざ女だと言われると今度は男にしか見えないから不思議なものだ。


あの時、仲間の元へ逃げようとしたバラクと追いかけてきたネイゼルは剣を交わすこととなった。純粋な剣の腕はバラクの方が上手で、バラクは無事に逃げ切ることが出来た。

「ネイゼルと斬り合った時にな、あいつが纏っていたマントが外れて喉元が見えた。それで女だとわかった」

バラクはネイゼルに交渉を持ちかけた。
女だということを黙っている代わりにユアンを返せと。ついでにウラール族とハカ族との間に同盟を結ばないか?と。
今、それぞれの部族が欲している領土は重ならない。だから、今潰し合うのは得策ではないと。
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