黄金の覇王と奪われし花嫁
「言っておくが、 私は別に女であることを弱味だとは思ってないぞ。隠しているつもりもない。すでに名前が知れ渡っていた死んだ兄の名前をそのまま利用させてもらっただけだ」

ネイゼルというのは彼女の兄の名前だった。ハカ族は元々彼女の兄が族長を務めていたが急病で死んだため、彼女が名前を継いだ。
バラクが言うには、兄よりも現ネイゼルの方がずっと賢く強敵だそうだ。


「それはわかっている。だから同盟はハカ族により利がある内容にしているだろう?名より実を取るタイプのお前なら間違いなく呑むだろう条件にしたつもりだ」

バラクの言葉にネイゼルはまたニヤリと唇の端をつりあげた。

「名誉やら誇りやらと下らん事にこだわるのは男だけだ。
ま、同盟などなくても私は誰にも負けないが、今回は名誉よりも女が大事だと言うお前の心意気に免じて譲ってやるよ」

ネイゼルはユアンにちらりと視線を向ける。きょとんとして何もわかっていないユアンの顔を見て、ふっと微笑んだ。

「あぁ、大事だ。同盟を受けてくれて感謝する、ネイゼル」

バラクはまっすぐにネイゼルを見つめ、礼を言った。
ようやくバラクの言葉の意味を理解したユアンはかぁっと顔を赤くする。

「そう素直に認められるとつまらんな。
まぁ、よい。 お前とはいつか決着をつける日が来るだろう。

ユアン、私が勝った暁にはお前を侍女にしてやってもいいぞ」

ネイゼルはユアンに微笑んだ。
ユアンもつられて、クスリと笑う。

「ねぇ、貴方の本当の名前は何と言うの?」

「・・イリアだ。久しく使ってないがな」

「わかったわ、イリア。 貴方がバラクに勝利した時は私は貴方の侍女になる。約束するわ」


ユアンはイリアに手を振って、バラクとトゥイと共にハカ族のオルタを後にした。


「おい、ユアン。 さっきの約束はなんだ?」

拗ねたようにそう言ったバラクにユアンはとびきりの笑顔を見せた。

「あら。だって私は何があっても生き延びて、世界の果てを見に行くって決めたんだもん。 イリアとは結構気が合いそうだしね」
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