黄金の覇王と奪われし花嫁
寝台の上にはバラクがゆったりと寝そべっていて、ユアンはその前で身体を固くしていた。

「いつまで、そうしているつもりだ?ユアン」


「えっと・・・あのね、バラク。
私、父の、ガイールの才能をきちんと受け継いでいるかもわからないし、風の女神の生まれ変わりなんて言うのも何の根拠もないし・・・けど、貴方の為に風の女神になろうと思う。

黄金の狼バラクの元には女神の強力な加護があったって伝説を必ず作るわ。
それが私のさだめだと思ってる」

新しい世界の王になるのがバラクの運命ならば、自分は王の妻としての道を歩こう。 ようやくその覚悟が出来た。


「ふっ。ガイールの血やら王の妻の器やら色々と自分に言い訳したが、本当はそんなもの求めていない。
・・・初めて会ったあの時から、俺はお前を自分のものにしたかった。最初からそう言えばよかったんだな・・・ユアン、お前を愛しているから俺の妻になってくれ」

バラクの黄金に輝く瞳にまっすぐに見つめられ、ユアンの胸は張り裂けそうなほどに高鳴った。
頷くだけで精一杯だった。

「・・うん」


「新しい世界は俺が必ず見せてやる。
その役目はナジムにもイリアにも絶対に渡さない。 お前はずっと俺だけのものだ」

そう言うとバラクはユアンを引き寄せ、ぎゅっと抱きしめた。
ユアンの髪を優しく撫で、唇にそっとキスを落とす。

「お前に似た子供がたくさん欲しいから、子はたくさん産め」

バラクらしい率直な物言いにユアンはクスリと笑みをこぼした。そして、返事をする代わりにバラクの唇にキスを返す。


抱えきれない程のバラクの愛に
包まれて・・

こんなにも幸せな夜があることをユアンはこの日、初めて知った。
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