黄金の覇王と奪われし花嫁
どちらが勝利してもおかしくない互角の戦いだった。

だが、運命はバラクに微笑んだ。

それは、一瞬の出来事だった。

ほんの少しシーンの陣形が崩れた隙をついて、バラクが一点突破に成功する。

この一撃が勝敗を決する事となった。

わずかな乱れはシーンの部隊に伝播していき、大きな乱れを生んだ。
ガイールの指揮が届かず、騎兵の動きがバラバラになりだした。

バラクはこの好機を逃すまいと、総攻撃を仕掛け一気にシーンの部隊を壊滅させた。


「バラク、族長ガイールの血縁の男で生き残っているものはいない。もう、終わりでいいだろう」

バラクの側に戻ってきたナジムが戦況を報告する。

「ガイールの血を引く女はいたか?」

バラクは問いかける。

「女達はガイールのオルタに固まって保護している。 ガイールの正妻は既に亡くなっているようだが、側女は4.5人いるようだな」

「側女などはどうでも良い。ガイールの血を受け継ぐ女が欲しい」

「・・・娘が一人いるそうだ」

「では、我が妻を迎えに行くとするか」

バラクは黄金の髪をなびかせ艶やかな笑みを浮かべると、ガイールのオルタに向かって歩き出した。
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