イレカワリ~番外編~
だけど俺はまだ知らなかったんだ。


これは世界の終りなんかじゃない。


世界はもっと残酷で、人をどこまでも追い詰める事ができる。


「クラスメートの小田ここねちゃんのことが連絡網で回って来たけど、知ってる?」


夕食時、とくに食欲もないけれど家族全員がダイニングに集まった。


沙耶が死んで間もなく、家の中はどんよりと沈み込んでいるのがわかった。


それでもどうにか前を向こうと、お母さんが立派な料理を食卓に並べてくれている。


「ここねが、なに?」


俺は特に興味もしめさずにそう聞いた。


「昨日、亡くなったそうよ。連絡網で回ってきたの」


お母さんはそう言い、ため息を吐き出した。


「え?」


俺は顔を上げてお母さんを見る。


いま、なんて?


「次から次に、大変だけど歩はクラスメートだったから葬儀には出ないとね」


「ちょっと、待って? 今なんて言ったの?」


俺は聞き返す。


頭の中は真っ白だ。


「クラスメートの小田ここねちゃんよ。歩知ってるでしょ? ほら、写真をとったりしてたっていう、あの変な子よ」


お母さんはそう言い、しかめっ面をした。


ここねの事は父系にまで広まっているため、悪い印象しかないようだ。
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