イレカワリ~番外編~
今は海と会話をしている気分じゃなかった。


沙耶が死に、ここねまでいなくなってしまった。


一体なにがどうなっているのか、巨大な力がそうさせているようにすら、感じられていた。


「イレカワリ」


海が一言そう言った。


「それがなんだよ」


イレカワリ。


俺と海にはその能力がある。


そんなの、今更言わなくても……そこまで考えてハッとした。


自分の写真を両手に抱えて泣きじゃくっていたここねを思い出す。


「ま……さか……お前!!」


俺も海も、イレカワリの能力を悪用した事なんて1度もなかった。


少し人を驚かせるために、互いに入れ替わるだけだった。


他人と自分を入れ替えたことだって、1度もない。


だってそれは、他人に迷惑をかける行為になるからだ。


自分たちの能力についてはできるだけ口外しない。


他の人たちはとても驚くから。


この能力は俺たちだけで、人の迷惑にならないように使おう。


それが、幼い頃の自分たちで考えたルールだった。
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