イレカワリ~番外編~
瞬間、血に染まった浴槽が目に飛び込んできた。


左手だけを湯船に付ける形で動かない海。


「おい、なにしてんだよ!!」


慌てて駆け寄り、海の体を浴槽から離した。


左手首には大きなパックリと開いている傷があり、そこからとめどなく血があふれ出している。


「タオルで止血しろ!」


純がそう言い、脱衣所のタオルを投げて来る。


俺はそれを受け取り海の手首に押し付けた。


しかし出血はとまらず、白いタオルはすぐに真っ赤に染まる。


排水溝にどんどん吸い込まれていく真っ赤な血液。


海はグッタリとしていて目を開けない。


呼吸も弱くなってきているのがわかった。


見かねた純が救急車を呼んでくれている。


でも、このままじゃきっと間に合わないだろう。


「目を開けてくれよ、海……」


俺は海の体を抱きしめたまま、上を向いた。
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