イレカワリ~番外編~
それもそうか。


純に期待はしていなかったものの、その通りの返答に俺は周囲を見回した。


時間が少し早いからか登校して来ている生徒たちはまだまばらだ。


でも、その中に生徒会長の姿を見つけた。


おさげの黒縁メガネのその姿はどう見ても優等生だ。


俺は席を立ち、1人で本を読んでいる生徒会長に話しかけた。


「アズ、宿題してきた?」


俺に突然下の名前で呼ばれた生徒会長は驚いたように目を丸くして、本を落としかけていた。


そんなに驚かなくてもいいのに。


そう思いながらも、新鮮な反応が面白くて笑ってしまう。


生徒会長であるアズは頬を赤くして慌てながらも「してきたけど」と、返事をしてくれた。


「宿題、写させて」


堂々とそう言う俺にアズは眉を寄せてあからさまに嫌そうな顔を浮かべた。


真面目なアズのこんな表情を見るのは初めてかもしれない。


俺はパンッと音を立てて手を合わせ、アズに頭を下げた。


「頼む! 夏休み中は忙しくてなかなか勉強できなかったんだ!」


と、嘘をつく。


このまま提出すれば先生からの怒りが落ちて来るのは目に見えている。


どうにかしてうつさせてもらう必要があった。


「どうせゲームばっかりしてたんでしょ」


そんなアズの声がして俺は顔を上げた。


そこには呆れながらも宿題のノートを差し出してくれているアズ。


俺はそのノートを奪うように受け取ると「まじ、感謝!」と言い、自分の席へと戻ったのだった。

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