イレカワリ~番外編~
俺は視線を教室の入口へと向ける。


そう言えばそんな事言ってたっけ。


後は帰るだけだと思っていた俺は時計に視線を向ける。


早く帰りたいけれど、転校生は気になった。


先生が廊下で待っている生徒に声をかける。


その生徒がおずおずと教室に入って来た瞬間……俺の中から音が消えた。


教室のざわめきも、外の風の音も、すべてが無音になった。


教室に入って来た少女は少し頬を赤くして、先生の横に立つ。


先生が黒板に少女の名前を書いていく。


⦅小田ここね⦆


先生がその名前を書き終えた瞬間、聞こえなかった音が蘇って来た。


「自己紹介をどうぞ」


先生に言われ、緊張しながらも自分の名前を言う。


少女、小田ここね。


「隣町から転校してきました。好きな科目は家庭科です。よろしくお願いします」


少し震えたその声は鈴の音色のよう。


小田ここねの自己紹介にワッと教室が湧いた。


拍手、拍手、拍手。


少女は顔を赤くしお辞儀をする。


先生に案内され、開いている後ろの席に座った。
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