イレカワリ~番外編~
「ありがとう歩。うまかったよ」


最後にはそう言ってほほ笑んだ。


感謝の気持ちと笑顔は、俺にとって何よりの美味だった。


「あぁ」


「歩は料理が勉強できる高校に進むのか?」


そう聞かれて俺は食べる手を止めた。


中学1年の2学期が始まったばかりで明確な進路が決まっているわけじゃない。


だけど、どうせなら好きな事を学べる高校を選ぶつもりだった。


「どうした、いきなりそんな事聞いて」


「いや、ただなんとなく」


海はそう言い、うっすらと笑った。


その時、俺は海の目指しているものがなんなのか知らない事に気が付いた。


「お前は?」


「俺は、普通科に行くと思うけど」


「何もやりたいことがないのか?」


「そうだな。お前みたいに特別やりたいことは、なにもない」


そう言いながらも海は視線を泳がせた。


「嘘だろ。なんかあるんだろ?」


そう聞くと、海は困ったように眉を寄せ、そして笑った。


「やっぱり双子のお前はごまかせないか」


「あぁ。言えよ」


「沙耶と一緒に暮らす事。とか言ったら、笑うだろ?」


海は冗談っぽくそう言ったけれど、その目は真剣だった。
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