イレカワリ~番外編~
「そっか。そうだったよな」


その態度に俺は一瞬にして怒りがこみあげて来るのを感じていた。


歩は沙耶の誕生日を忘れていたのだ。


今まで忘れたことなんて1度もなかったのに。


「なんだよ、忘れてたのか」


低い声でそう聞く。


歩は申し訳なさそうに頭をかいて「ごめん」と、謝った。


歩が沙耶の誕生日を忘れてしまう原因なんて、1つしかなかった。


あの転校生だ。


まだ見たことはないけれど、転校生が来てから歩はずっと上の空だ。


大好きなゲームをしている時でさえ、ボーっとしている時がある。


「沙耶は俺たちの幼馴染だぞ」


好きな子ができたらそっちに夢中になってしまう。


それは俺だって理解しているつもりだった。


でも、なぜだか沙耶の誕生日を忘れていた歩を許せなくて、俺はそう言った。


「悪かったって言ってるだろ?」


歩はムッとした表情を浮かべてそう言い返して来た。


歩には歩の生活がある。
< 26 / 117 >

この作品をシェア

pagetop