イレカワリ~番外編~
スマホからキャラクターが死ぬ音が聞こえて来る。


「あ、ほらまた死んだ。歩、お前がちゃんと教えないからだぞ」


純は文句を言って俺の肩を叩いて来た。


「あ……うん、ごめん」


ごめん?


ごめんって、一体何に対してだろうか。


俺は自分で言っておいて言葉の真意を掴めずにいた。


視界の端にここねが見える。


最近では女子生徒とも打ち解けてきて、随分仲良くなっている。


イジメの標的にはならなくてよさようだ。


「お前はさ、もう少し素直でよかったんだと思うぞ」


純がそう言う。


いつの間にかスマホはポケットにしまわれている。


「素直……?」


「そうだよ。人に譲るとか、そういう事しなくてよかったんだ」


純は沙耶の事を言っているんだろうか?


だとしたら、俺はどうすればよかったんだ?


沙耶は海の前では笑顔になる。


俺はその笑顔を壊したくない。


俺が沙耶への気持ちを絶ったのは、沙耶のためでもあったんだ。


「難しいよな、恋愛ってさ」


学年で一番カッコいい純はそう言い、窓の外を眺めたのだった。
< 32 / 117 >

この作品をシェア

pagetop